「お前、青峰のことほんと好きだよな」 その言葉の中には嫉妬もなにもなかった。彼は事実を述べたのだという顔をしていた。 そう、間違いではない。彼が言ったことは事実なのだから。しかし、好きの意味がどういう意味なのかは分からない。 一人のプレーヤーとして、かつての仲間としての好きという意味なのか。それとも恋愛としての好きの意味なのか。 おそらく前者だろう。後者のことなど、彼はこれっぽちも考えていない。 「好きですよ。彼のプレーは人を惹きつけますから」 「だよな。あいつスゲーよ」 火神くんは、まぁ、オレも負けねーけど、とにやりと笑った。 青峰くんは僕の光だった。とても眩しすぎて、強すぎて、僕という影を呑んだ。彼をすごいと思い、彼と同じコートに立てた自分を誇らしいと思った。 火神くんの姿をみるとき青峰くんの姿が重なってみえることがある。僕の心の奥底にいるのは青峰くんだ。 あの日体育館で青峰くんに会っていなかったら、僕はバスケをやめていたかもしれない。僕を導いてくれたのは青峰くんだった。 才能のある人間に囲まれて、自分の存在意義を確かめられた日。才能のある人間に囲まれて、自分の存在意義を見失った日。どちらも忘れることはない。 ここで、彼と出会ったことも、忘れることはない。 「火神くんも好きですよ」 今は、バスケの話だ。だからいくらだって言える。彼のプレーが好きだと。 当たり前だ、と嬉しそうに微笑む顔にも満足してもいい。だって、バスケの話なのだから。 僕らはバスケがとても大好きなのだから。 「オレもお前のバスケ、すげーと思うし、好きだ」 最大級の褒め言葉には、笑えばいいのに泣きそうになる。僕はこの優しさに惹かれた。嘘が全く込められていない、真っ直ぐな言葉を与えてくれるのは彼なのだ。共にバスケをしたいと思うのも、勝利をして笑いたいと思うのも、触れたいと思うのも彼しかいない。 いつまでもが叶わないことを僕らは知っている。変わるのが当たり前で、変わらなければいけないのだ。 それでも人は望まずにはいられないのだ。愛してやまない日々があれば、人がいれば、失いたくない。いつまでもこのままで居たいと。 僕はいつまでもバスケがしたいと思う。 僕のバスケを、願わくは彼と。 20121023 いつまでも |