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(俺はこれからこいつらを見守りながら出来る限りを過ごして行きたいと思うわけ。新八はよく働くし、いざという時はしっかりして姉ちゃん想いだしよ。
神楽にいたってはそりゃ確かに可愛いと思うこともたくさんあるさ。だってしょうがねぇじゃん、もう俺おっさんだもん。子供の成長を見守る眼差しってやつだよ。食に関しては酢昆布と白飯と卵とふりかけがあれば満足してくれんだよ。まあ最近俺に似てきて甘党になっちまってよ。困っちまうよなァ、二人して糖尿への道とか、もうこりゃ笑えねェよ。なぁ、神楽?)
暗闇の恋人7 ドンドン。戸を叩くにしては乱暴な音だ。どうせババァが金をとりにきたのだと思って俺達はいつも通り口を閉じて静かにした。身を屈める必要も、三人で固まる必要もないのに何故か身を屈め、体を寄せて、ソファの後ろに隠れるのが当たり前となっていた。 「銀ちゃん!泣き落とし作戦はどうアルか」 「そんなんで落ちるわけねぇだろ、ババァだぞババァ」 「ババァにもちゃんと心があるネ!銀ちゃんはババァを何だと思ってアルか!」 「ババァはババァに決まってんだろ!」 「ちょ、もう二人とも静かにして!」 新八に言われて大人しく神楽と俺は二人で顔を見合わせて人差し指を口に当てた。金があるかないかというよりは、この状況を楽しむ事が恒例になっているのである。 ドンドンドンドンドンドンドンドン。叩く回数は増える一方である。隣で神楽がババァも激しくなったなあと呟いた。 確かに激しい。このままだと戸が壊れるじゃねぇかってくらい狂ったように戸は叩かれ続けている。これで壊れてもババァの責任だから別にいいのだけれど。 「あれ?でも、確か今月分って払いましたよねぇ?」 ドンドンドッ、ガッ、バキィッ。え、まじで?そういうことは早く言えよ新八!と言う前に残念ながら大きな破壊音がした。何だ何だと今度は三人そろって戸へ向って匍匐前進をする。 「居るのはわかってんでさァ、観念しろィ」 特徴のあるこの口調で話す男は俺の知っている中で、いや、俺達が知っている中では一人しか居ない。 どこぞの映画みたいな登場しやがって。ちなみにスモーク代わりと言っては何だが埃が舞っている。こういう場合は二パターンあって、皆を助けに来たぞ!正義のヒーロー参上だ!という場合とさあお前たちはもうどうしようもない、ふはははは!という悪の パターンだ。これからの展開を予想してみると多分後者であろう。嫌な予感がする。 「ちょいと派手に登場しちゃいましたかねィ」 「ちょいとじゃねーよ、派手すぎだろこれ!ご近所さんから苦情きたらどうすんのォォ!」 「いやいやこれは申し訳ねぇと思ってまさァ。ちゃんとあとで直すよう連絡しときやす。…で、眼鏡君には悪いんだけど、俺ァそこで二人して呆けているやつらに用があるんでさァ。これから少々取り込むんでねィ。あんたにとっちゃ関係ないかもしれやせんし、嫌なら出てって行ってくれても構いやせんが、居るなら黙って聞いててくだせェ」 「二人、って、え?…あ、」 振り返って新八が俺と神楽を交互に見える。銀さん、もしかして。新八の口は音を発さずに動いた。どうやら新八も何となく状況を理解したらしい。呆けていた俺も神楽の方を見ると、神楽は顔だけ上げて目の前に立つ男を見ていた。 「チャイナァ、逃げんじゃねェぞ」 追いつかない頭の中で俺はやはり「映画だ」という一言しか考えられなかった。もしくはドラマが、今俺たちの前で繰り広げられている。これをどうしろというのだ。 (俺達の間に永遠が存在しないことくらい誰もがわかっていた。それを、誰よりも分かっていたのは俺のはずだったのに。 時は必ず経つ。必ず別れもくる。俺は大人のままだ。けれど子供はいつまでも子供ではない。やっぱりわかっていなかったのか?特にこの年頃は成長が早ェって聞くじゃねぇか。俺は初めて神楽の女の目を見たのだ) (それは、俺が今まで避けてきたものだった) ← → |