マイ・フェアリーテール

「我輩は帰る、いくら能無しといってもこの意味は分かるだろう?」

頭を掴まれて(ネウロの手は容易く私を掴み)壁に打ち付けられる。聞きなれた鈍い音がして少しだけ目の前がちかちかする。 嫌な予感がしてたんだ。事件が終って久しぶりに謎も食べれたっていうのになんとなく清々してない顔で(口に合わなかったのかななんて思ってたけど)事務所まで黙々と歩いて。 やだ冗談やめてよ。嘘でしょう。だってやっと長い事件が終って、一休みして、それでまた頑張ろうって思ってたのに。
(嘘じゃない、)(あんたの手って甚振るしかできないと思ってたのに、)(やさしかった)
魔界へ帰る。私が知らない場所。ネウロしか知らない、ネウロの故郷。そこは美味しいものたくさんある?人間でも生きていける?そこにあなたを迎えてくれる人はいる?もう地上の謎は食べつくしてしまったの?私にはわからないけれど。それとも何かもっと大事な理由があるの? 開け放たれた窓からは生ぬるい風が吹き込み、薄汚れたカーテンが揺れている。(買い換えたいな)(美味しそうなクリーム色がいい) 急に来て困らして急に帰ってまた困らせる。今度はそれだけじゃない困るだけじゃないんだよ。寂しくなる、きっと。
「そっか、元気でね、それで…あんたがいいよって言うわけないと思うけど、いやわからないけど」
「なんだ、早く言え」
何で最後に限ってそんなやさしい声でやさしい顔で言うの。そんなのされたら言えなくなる。でも言わないと、苦しめられるから。

「もう帰ってこないって約束してくれる?」

いつか帰ってくるという希望なんてないほうがいいから。そんなのがあればそれだけにすがって私は生きてく。 未来に彼が帰ってきてまた無理やり探偵をさせられて今度は女子高生じゃなくて美人OLとかの肩書きで、というそんな想像をしないように。
「いいだろう、そもそもそんな約束なんてする必要もないと思うが」
「だ、だよね、でも念のため、っていうか、最後くらいそれぐらい聞いてくれたらいいなって」
「聞いてやる。弥子、我輩はもう二度と貴様の前には現れない、そうして貴様は年をとって我輩の事を忘れるだろう」
「そうだよ、そうあんたのこともきっと忘れて、」
それで好きな人を見つけて温かい家庭を築いていっぱいご飯つくって皆で食べて毎日笑いながら過ごすの。ああでも、やっぱり、無理だよ。
「弥子、」
「…なによ」
「何故泣く?もっと喜ぶと思ったのだが」
とかいっときながらあんただって今まで見たことないくらい変な顔してる。 それはね、きっと私があんたのことを忘れる事なんかできなくて、いつまでも忘れられなくて、年をとっても周りの誰かの名前を忘れてもあんただけのことは忘れられなくて、それで死んじゃうから。 ねえ、私やっぱり無理だ会えないの。私が今度は生まれ変わってあんたに会いに行くから。そしたらまた何処にでも連れてかれてたまに殴られて痣もいっぱいつくって文句言っての繰り返しで、きっとまた恋をする。