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目の前に居るひとは生きていたので、何を話せばいいのか戸惑った。 いや、でも生きているひとと、関わりは少ないけれど持っている。けれど何故だか戸惑ってしまったのだ。 画面越しの文字で相手の意思を読み取ることばかりだったものだったからだ。 動いている、笑っている、怒っている。顔が見える。そして、ちゃんと俺の名前を呼ぶのだ。 ゲームの話でもなくて仕事の話でもなくて、どうでもいい話のために(俺の、ために?)呼ぶのだ。 やめてよ、叫んだ声は誰のためのものだったのか、わからない。世界のためかもしれないし、ネウロのためかもしれない。 (でも、俺はそれで救われたのかもしれない)(命が?心が?この先が?) なあ桂木、おまえ本当はさ、俺よりも話したいやつたくさんいるだろ。(だけど、駄目だ、渡せないんだ) 桂木の口があけられて白いクリームの固まりが運ばれていく。甘い匂いがした。 机の上にある二枚の皿の上のケーキ、片方はもうすぐなくなるだろう、もう片方は形を崩さないでいる。 「あの、」 桂木の視線が俺からケーキに移された。ごくり。生々しい音が聞こえた。 「食えば、これも」 「え、いいんですか?…ほんとに食べちゃいます、よ?」 「…もうフォークさしてるし」 桂木は気まずそうな顔をして笑った。いいよ、そのケーキだってお前に食べられる事を望んでる。 桂木、おまえ今まで何人の人間を救ったんだろうな。心を、体を、そいつの人生を。 こんな話をしたら、おまえは私、そんな大袈裟なことしてないよ、って言うんだろう。 そしたら俺はどうなるんだよ。俺は、ただ通過点だった、って。(それだけ、か) 桂木、今おまえこうして俺の話を聞いて、話をして、何を考えてる? ひとの心を、理解する心がおれには足りない。わからないんだ。なあ、だから教えてくれよ。 寂しいんだよどうにもできなくて。俺は、おまえとは違うから。 (おまえの話だって、なんだって聞くから、だから俺にも、) けど、おまえは話さない。これだけは、わかる。そう、こんなことしか、わからない。 これを孤独というの
ラストレターの燃えた日 |