永久に続け

今日もまた不穏な空気がグラウンドの端で流れている。怒りを堪える捕手と涙を堪える投手は、まるで正反対の性格なのだ。それでもお互いに会えてよかったと思っている。おれもそう思う。ベンチを蹴る音がしたあと阿部だけが近づいてくる。頭を抱えて舌打ちする。最後にでかいため息。あーあ、またか。
「今度は何?」
「たいしたことじゃねーよ。なのにまたあいつ泣きやがって!」
「まあまあ落ち着いてさあ」
「落ち着いてる!」
この調子じゃ駄目だ。こっちまで頭を抱えたくなる。二人で項垂れていると「みーはしー!どしたー!」と田島が三橋のほうへ駆け寄るのが見える。それを見て阿部の顔がさらにひきつる。
「…何で俺じゃ駄目なんだよ」
「だって阿部怖いもん」
「はぁ?どこが」
「どこがって、全体的に」
そしてまた舌打ち。だいぶご立腹のようだ。確かに阿部と一対一で向き合って話すっていったら結構緊張するだろう。低い声で難しいことを淡々と喋って、何もしていないのに怒られたような気分になってしまうのだろう。ということで、阿部と三橋をみているとどうしても三橋のほうを気にしてしまう。もちろん阿部が嫌いなわけじゃない。ただ、上から怒鳴りつけられるあの姿をみると何とかしたほうがいいんじゃないかと勝手に思ってしまう。
「阿部さ、いつだって、終わりはくるんだよ」
「なんだよ急に」
あっけないくらいに終わりが早くくるのを俺は知っている。何だって、いつだって。
「くるんだよ。だからちょっとくらいは優しく、な」
「…これでも頑張ってんだよ」
「はいはい、あ、ほらこっち来た」
田島が三橋と肩を組んでやってくる。にっこり笑った田島ときょろきょろと視線を動かす三橋もまた対照的だ。こちらまであと数メートルというところで三橋の足がとまる。それでもそんなのには構わずに田島は三橋を引きずって歩いてきて、
「仲直りしよーぜ!な!」
ぶんぶんと三橋が頷く。その勢いに阿部の表情が緩んで、
「…俺も悪かったよ」
「よかったなー三橋!ってか俺なんで喧嘩したのかしらねーけど!」
「う、うん、よかった!」
「喧嘩じゃねーよ!」
じゃあ何だったんだ。そのやりとりが面白くて、つい笑ってしまうと「何笑ってんだよ!」と少しだけ顔を赤くした声が鼓膜を貫く。(阿部もやっぱ普通の人間だよな)
本当に、西浦に入れてよかった。皆と居る今を大切にしよう。
(終わりがあるなんて、信じたくないよなあ)