いつかの願い

幸運だと思っていた。あいつとバッテリーになれたことを。ただレギュラーになりたくて、勝ちたくて、だから、多少の(といってもほとんどに近い)我慢はいくらでもした。 元々我慢が得意ではなかったので、俺の我慢は一気に崩れ落ちることになったけど。あいつにとっては俺は何でもなかったのだということを、悲しいかなグラウンドで悟ったのだ。 憎くて憎くてしょうがなかった。受け止めた時のミットの音。それだけの為に震える手足を無視して、あいつの前に座っていたのに。何で俺の言うことを聞かない?年上だから、エースだから、ケガを恐れたから?どうして分かり合えない?分かり合おうとしなかったのか?いやいや、どっちが?(諦めて、いた?) あの速い球を、あいつが投げる球を捕れるのは俺だけだとあの頃の俺はそう思って、揺らぐ足元をかろうじて立って手放さなかった。 崩れ落ちないように、それだけを自信にしていた。俺には大事なものだった。あいつが俺のことを本当はどう思っていたのかなんて知らない。ただの球捕りマシーンだったのかもしれない。(しかも文句言って、小さくて、年下で生意気な奴)あの蔑んだ目に俺はどう映っていたのだろう。 例えば――例えば、あいつが凄く性格の良い投手だったとしたら、今頃俺はどうしていた?西浦を選んでいたのだろうか? でも結局のところあいつはあいつの野球を捨てない。そうだとわかっていたのに、俺はあいつに何を望んでいたのだろう?