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覚悟はとうに出来ていた 開けられたままの戸から誰も騒がず下を向いている姿がみえた。入ってはいけないような雰囲気なのにおれは吸い寄せられるようにその部屋の中へはいった。 それなのに誰も気づいてはくれなくて変わらず下を向いている。これが、真選組だったか。 やまざき、と小さな声が聞こえる。結局気づかないふりしてただけじゃないですか、ねえそうでしょう?なのになんでおれをみてくれないんですか、目の前にいるのに。 ここにいると、伝えなきゃおわってしまう。 (おれはここにいます。みんな何処向いてるんですか!) 伸ばした手は誰も掴んではくれなくて、音ひとつせずおれは床へと倒れた。そのとき、初めて気づいた、倒れたのではないということ。 風船のように体が軽いことも。声が発せられないことも、どうしようもなく目頭が熱い気がしたのに涙がひとつも零れないこと。 やまざき、とかさがる、とか。呼ばれるのは俺の名ばかりで。この声に返事が返せたら。はい、なんでしょうとすぐにでも傍に。 このままでもかまわない。消えてしまうということはとてもこわいから。過去も今もあるのに未来を抱くことはもう許されない。ここにいてはいけない。 せめて実体でもあれば少しだけ良かったのに。皮肉だけれど自分で自分に触れることすらできないこの姿ならどこへでも偵察にいけるのに。もう恐れる事もない、何だってやってみせます、だから。 (忘れないでください)(おれは、昔も今もこれからも、) 「ここにいる」 近藤さんが顔をあげて呟いた。同時に隊員たちが(一人だけ、土方さんだけは違った)何かわからないような顔をして顔をあげた。 「今もこれからも、さがるとおれたちは、ここにいる。そうだろう」 目を細めながら笑う近藤さんの声は震えていて、それと同時に部屋の中には鼻をすする音が溢れ出した。 おれは、役に立つことができましたか。目を伏せたらこの空気に溶けれる気がする。かえるならここがいいから。 (おやすみなさい) BALDWIN |