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溶けゆくすべて 冬は終りかけていて、新しい芽が出始めるだろうという頃にまた雪が降り、珍しく数十センチは積もっていた。「俺は寒いの苦手なんでィ」「じゃあ中に居ましょうよ」「馬鹿、雪が溶けちまうだろィ」なんて言い合いながら俺達は薄着で外に出た。 そんな小さい子みたいに、と思っていると沖田さんはしゃがん雪をかき集め始めた。 山崎、と呼ばれて俺もしゃがむ。手を赤くしながら雪をかき集める沖田さんを見ていて、ぼんやりと昔のことを思い出した。 そういえば雪は好きだった。しかし深く積もる事はなかったので寝て起きれば雪は綺麗になくなっていることが多かった。 (俺はどうして雪がなくなったの、と騒がずただ一人で仕方ないと思っていた気がする。) 沖田さんの色素の薄い髪がきらきらひかる。真っ黒な髪の俺は沖田さんのような綺麗な髪の色に憧れる。憧れてばっかりだ。 沖田さんはしゃがんだ俺たちと同じくらいの大きさぐらいの雪だるまを作って小枝で、ひじかたと胴体部分に名前をいれた。そして近くに落ちていた枝や葉で土方さんそっくりの雪だるまが出来上がる。器用な人だ。 「あの人も溶けちまえばいいのに」 「なんか詩人みたいですね」 「うるせェ」 「そんなに嫌いなんですか」 沖田さんの手がとまる。しばらくしてまた動き始めて小さな雪玉をひとつ作って投げる。 べしゃり。見事にそれは俺の顔に当たった。顔が冷たくなって手で雪をはらいのける。 文句一つ言えず、もちろんお返しに雪玉を投げる事も出来ず。沖田さんの表情が怖かったからだ。 「嫌いだと思ってたらもうとっくに殺してらァ」 「殺し、って、本気です、か?」 「山崎ィ、お前、馬鹿?」 「えええ、じゃあ」 「思ってるわけ、ねぇだろ」 ぐしゃりと音がして沖田さんがひじかただるまの頭部を(俺が勝手に名前をつけた)蹴り倒す。 にたりと笑っている沖田さんの顔を見て、ひじかただるま(もう何だかわからない)を見る。あんなに愛らしい(いや、目つきは悪かった)姿が今ではもう痛々しい。 「手で潰すより刀ですっぱりやっちまったほうがよかったかもなぁ」 そう言いながら笑う沖田さんの顔にさきほどの怖さはない。憧れほど敵わないものはない。俺は、わかっていたのに。反省しよう。 「おい、山崎もっとこっち来なせェ」 足先と指先がじんじんする。まだ降る雪の中もっと沖田さんに近づくと、「耳、」と一言だけ言われて、顔を寄せる。 「あそこから白い煙が出てるだろィ、ありゃあ間違いなく」 沖田さんが指を指した方向に目をやると確かに息ではない白い煙があがっていた。姿は見えなくとも土方さんが煙草を吸っているのだろう。 「土方さんですねえ、聞いてたんでしょうか、この話」 土方さんのことだから多分うっかり俺たちの話を聞いてどうしたらいいんだって迷って動けないでいるに違いない(こういうのは良く当たるのだ) そんなことを思ってくすくすと笑っていると沖田さんもらしくもないあどけない表情で笑う。 |