あねうえはびじんできれいでやさしくてなによりも大せつで。 ひとりでそとにいたってあね上がいるからさみしくなんかなかった。 でもおれはあねうえがじいっとやろうをみているのをしっている。 あのやさしいめをもおっとほそめて、ずっとずっとみているのをしっている。 とうしろうさん、とよぶこえが、はなすこえがすこしだけたかくなるのをしっている。 あのしろいほおをあかくそめたあねうえのかおはあまりすきではなかったけれど、 あねうえがとてもうれしそうだったのもしっている。 あるなつの日やろうのながいかみがとてもあつくるしくて、いつもよりももっとうっとうしくなったので あんなのきればいいんでさァとおれがいったらあねうえはくすりとわらって そうちゃんのかみもきれいよ、といってゆびさきを髪にからめてくれた。 おれのいったことになんにもふれていなかったけれどあねうえのやさしいてのひらがおれのかみをなでるから すこしだけてれてわらった。くやしくなんかない。うらやましくなんかない。だって、いつだってあね上はやさしい。血だらけのひざをかかえて、こぼれおちそうななみだをがまんしていたときには あねうえはゆっくりとそのしずくにふれてくれる。よくがんばったわね、

――総ちゃん、あの透き通るような声で起きた。 手を伸ばせば、もしかしたらなんて、思ったけれど、 手を伸ばすことはなく、そのままぼおっと天井をみた。夢か、幻聴、のどっちか、なのだろうか。 汗が背中を伝うのを感じながら息をはく。(すーはーすー…)ああ、生きている。 瞼をきつく閉じて、もういちど呼吸。(すー、はー、すー……はー…)よし、生きている。 もう一度だけあの夏の空がみたい。今の俺の目にはどううつるのだろうか。問いたいことが、教えてほしいことが、山ほどある。 きっと口に出せば、あの人はまた微笑むのだろう。 涙など流すことなんて滅多に無くて忘れてしまうほどだが、今はあの指先がひどく恋しい。


傍には柔らかな鼓動を
(ほおら、大丈夫、泣かないの)