幸せな夜を

やっぱりクリスマスは甘いものが必要だ、と銀ちゃんは言う。
確かに甘いものは必要かもしれない。クリスマスくらいは酢昆布から離れてもいい。
だから、私もそうだそうだと新八に言っけど、どこにそんな金があるんだ、と言われてしまった。

「だいたいね、そんなこと言ってたらうちじゃ毎日がクリスマスだよ」

確かに。 銀ちゃんは材料があればケーキだって作ろうとするし、甘い物だってある(本人はこっそり置いてるつもりなんだろうけど)
甘いものを食べる=クリスマスだとしたら本当に毎日がクリスマスになってしまう。
銀ちゃんはそれでもいいとか言いそうだけど。
でもやっぱり食べたい。普段ぐだぐだと食べるようなのじゃなくて、こうクリスマスらしく、というか。
ツリーを用意したいと思ってもうちにはそんなものがない。
せめてケーキを食べて、サンタクロース(来ないというのはわかっているけど)を待つということくらいやってみたい。

「やっぱケーキは必要だろ、ケーキは」
「じゃあ作ってくださいよ、どうせ材料だってもうあるんでしょう?僕知ってますよこないだ買ってたの」

やっぱりケーキは作るらしい。まぁいつもと変わらないケーキだろうけど。
でも銀ちゃんが作るケーキは多分そこらのケーキ屋より美味しいと思う(ケーキ屋のケーキは食べた事無いけど、なんとなく)
日が暮れるまでケーキ作りに時間はかかりそうだし、手伝うといっても追い返されそう。
ケーキ作りは1度手伝ったことがあるけど、勢いあまって苺をつぶした記憶がある。

「ちょっと力いれすぎちゃっただけヨ」
「お前な、何個力いれたら気がすむんだよ。見ろこの苺たちを」
「この苺たちはちょっと運が悪かっただけアル」

まぁ、確かにあの苺たちは運が悪かっただけだ。ちょっと苺にも悪いと思ったけど。
そのあと、とりあえず見とけと言われて見ていたのを覚えている。
ふんわりと焼きあがったスポンジが白くなり、見事なデコレーションがされる。
綺麗に並べられた苺が華やかだった。誰が見ても美味しそうだと思うだろう。
きっと今回のケーキもそんな感じだ。
皿の上にごろごろと並べてある苺にこっそり手を伸ばしてみると、ガシッと手首をつかまれた。

「おいおい、誰に似たんだよ」
(銀ちゃんに決まってるネ)

渋々手を引っ込めた。暇で暇でしょうがない。
せっかくのクリスマスに女の子をほっておくなんてもったいないよ。
なんて、馬鹿げたことも思う。楽しいクリスマスって何だろう、と今になって考えてみる。
プレゼントをもらえばいいのか、それともケーキを食べるだけでいいのか。
よくわからなくて、とりあえず何かしようとケーキ作りに奮闘している銀ちゃんの所へ行く。

「苺潰さないから少しだけ手伝わせてヨ」
「何お前。まだ前のこと覚えてたのかよ」
「記憶力はいいアル」
「あー、はいはい。悪かったなぁ」

新八には内緒な、と言われ苺がのった皿を渡された。
食べてもいいアルか?と聞くと内緒でな、といわれた。
1つだけ食べてみる。甘酸っぱい。でも美味しい。
気がついたらどんどん減っていて。いや、私だけじゃない。銀ちゃんだって食べたはずだ。

「ねぇ銀ちゃん、もう少しか苺ないヨ」
「…これだけあればな十分なんだよ」
「でも、中の分と、上にのっける分は必要だから絶対足りないヨ」
「まぁな。細かいこと気にしちゃいけねぇよ」

ケーキの大きさ自体がかなり大きいのに苺が5個じゃ絶対足りない。
銀ちゃんはここからが俺の腕の見せ所だ、なんて言いながらケーキ作りを再開した。
本当に大丈夫か、と心配だったけどまぁ新八が食べるんだしいいか、なんて思った。
そしてやっぱり新八は突っ込む。このケーキ、苺薄くない?と。
そんなこと気にしちゃいけないと、銀ちゃんと私で言うとでも味はいいね、と新八は言った。
続いて私も美味しいと言った。当たり前だというふうに銀ちゃんは微笑む。
確かに美味しい。中の苺は見事にぺらんぺらんだったけど。
甘いものを食べてぐうたらして。本当にいつもと変わらない。けど、それが楽しいのかもしれない。
プレゼントはいい。此処で彼らとクリスマスを迎えたことをサンタに感謝して。
そうだ、傍で一緒に笑える人が居るから楽しいんだ。
私は幸せだ、そうだ、幸せ。ケーキをまた1口頬張った。
嬉しくて、顔が自然と笑顔になってしまうよ。

>>Merry Christmas!(041225)