つないで、いつわって

何かあったら俺があのゴリラに謝っとくからさぁ、と言うので(ゴリラはいいからもう1人の男に謝ってもらいたい)俺はのこのこ旦那の家にあがった。 (もちろん旦那だけが住んでいるのではなく)適当に座ってと椅子に手を向け旦那は奥へ消え、しばらくして二つ、湯飲みと団子をのせた皿が出てきた。 なんとまぁ、その姿が似合わないこと。(眼鏡をかけている少年に置き換えてみる)(ぴったりだ)
「お構いなく」
「君そういうキャラじゃないでしょ。遠慮しなくていいから」
団子は旦那の胃の中へ放り込まれていく。見ていたら食べなければいけないと思い、男二人で無言で団子をほうばっている。 どうして俺は此処にいるのだろうと今さらながらに思って。
「神楽は、」
そう言ってまた黙る。大丈夫、彼女の名前が出ただけだ。(団子を喉に詰まらす事は無かった)(少し、安心) 俺が焦る必要は無い。口の中にはもう何も入っていないはずなのに、ごくりと飲み込んでから。
「何でしょう」
「…元気か?」
「さぁ知りませんけどねィ最近は会っていないもんですから」
「嘘だろ」
「これが困ったことに事実なんでさァ」
嘘じゃあない。本当に、事実だから。それでもまだ嘘だ、嘘だと言う旦那を放っておいた。 大体なんで俺に聞くんだ。直接聞けばいいじゃないか。あんたは毎日会っているのに。
「毎日会っても、わからねぇことなんて腐るほどあるんだよ」
今度は見事に団子は喉へ引っかかる。むせて、茶をすすって旦那の顔を見れば腹が立つくらいの笑顔で若いねぇと一言。
「旦那は変なところだけ勘がいいんですねィ」
「年食っていいことっていったらこれぐらいしかねぇさ」
俺は早く年をとりたい。だけど旦那、あんたはその理由には気づかない。 此処へ来て初めて時計をみる。もう一時間は経ったというのに誰も帰ってきやしない。
「神楽はひとりで生きてるつもりかもしれない」
ああ、それを確かめたかったのか。しかし俺が今聞いた、旦那と思われる声は微かに震えているような気がして。 もしそうだったらどうすれば良いのだろうと意味も込められている気がした。これだから面倒だ。 いつだってあんたが居る場所は三人で成り立っているはずなのに。 知りませんよ、そんなこと。なんて言えるほど俺は冷酷にもなれず。
「そんな曖昧な、」
「ごめん、やっぱいいわ。何でもねぇ」
団子がささっていない串をくわえて、慌てて皿に戻す。(動揺している、なんて下手な) 次に茶をすすってみれば新八のほうがやっぱうまいなぁ、と呟いてからまた茶をすする。
「どうして俺に」
「君が一番近いと思ったから」
旦那が俺に向けるものは優しいものではなく、刃のようなものであり。(彼女を想ったものであって)それを上手いこと使うもんだから余計に腹が立つ。 それにこたえることはできずに空になった湯飲みを見つめていると、ただいまぁと少女の声。 「旦那ァ良いことを教えてあげまさァ。あの子はあんたのことしか見てないんでさァ」 銀ちゃん、誰か来てるアルかー、叫ばれた声に旦那は少しだけ眉間に皺を寄せる。(やっぱり来なければよかった) 遮られた言葉があった。
そんな曖昧な、あんたがそんな風に思っているんだったらいつまでたっても、彼女はひとりだ
(旦那はきっとわかっていたんだ)
俺の負けだ。